予告編の松たか子さんの涙で、早々見ることを決めました。
賞を取ったら、結構あとで見ようとするのですが、この後を考えると、ここでしか見られないかと。
【ストーリー】
戦後の東京で、才能がありながら放蕩三昧を続ける小説家・大谷を健気に支えて暮らす妻の佐知。貧しさを忍びつつ幼い息子を育てていたが、これまでに夫が踏み倒した酒代を肩代わりするため椿屋という飲み屋で働き始める。佐知は水を得た魚のように生き生きと店の中を飛び回り、若く美しい彼女を目当てに通う客で椿屋は繁盛する。そんな妻の姿を目にした大谷は、いつか自分は寝取られ男になるだろうと呟くのだった。
「
goo映画」より引用
参考サイト(リンク先は、投稿時点のものです)
excite映画 (
該当ページ)
映画生活(
該当ページ)
trackback from
相変わらず、ネタバレ気にせず記事をあげちゃいます。なので、下まで、気になるかたは、ずーっと見ないでください。
時系列に関係なく、方々trackback することをご容赦ください。
「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~」の映画詳細、映画館情報はこちら >>
【解説】
先に弱音を吐いて開き直ってしまうのは自己防衛の本能であり、ある意味計算尽くだ。そんな究極のダメ男である夫の不始末を常に受け止め、現実的に対処してゆく妻・佐知を演じ、かつてない色香を放つ松たか子が女のしなやかな強さを見せて美しい。2009年に生誕100年を迎えた作家・大宰治の「ヴィヨンの妻」「思ひ出」「灯篭」「姥捨」「きりぎりす」「桜桃」「二十世紀旗手」をもとに、ベテランの田中陽造が松をイメージして書き下ろした脚本は、セリフに息づく時代の匂いと文学的な美しさが光る。大宰を髣髴とさせる狡いが憎めない大谷役の浅野忠信も好演。第33回モントリオール世界映画祭で監督賞に輝いた秀作。
「
goo映画(
タイトルトップ)」より引用。
【感想】(ここでは、ネタバレはぼかします)
海外の映画祭で監督賞を取っただけでなく、太宰治、自分も何冊か読んだことがあったので、興味は十分。
映画館も海外の賞候補ということで、満員でした。
この映画、実際、最後のシーンを語らないと説明が難しいように思います。スチール写真などでも出てますし、他のところでもよく見ますが、2時間弱の流れの最後として、このシーンはとても、印象的であり、象徴的なシーンになっています。
台詞の端々は、当時の文体なんでしょうね。
でも、そのなんというか、”よそよそしい”感じが余計に、2人の距離感を感じさせ、佐知の大谷への台詞の変化で、男女の愛へのスタンスのようなものを感じさせてくれました。
最後のシーンで凄く感じられるのは、気質というか性格は、大谷と妻って、似ているのじゃないかと。 ただ、奥さんは、とても生に対して執着があり、大谷は、死に対して、あこがれとも言えるくらいの執着がある。これが大きな違いなのかもしれないが、実際それをフレームを通して見ると、「似たもの夫婦」に感じてしまったのは、私だけかも知れないですが、この2人に流れている空気というのは、同じような気がしました。
描き方としては、根岸さんだから、「ひとひらの雪」を思い出しました。
としたら、ヒロスエも松たか子さんも露出押さえ過ぎかと・・・(汗)。
【私の採点】(採点のあとは、思いっきりネタバレしますので(ぇ))
★★★★
(満点10点 ★:2点。☆:1点)
残念ながら、9点は、差し上げられないというのが、私の感想。それは、後ほど。
映画としては、「ヴィヨンの妻」だけでなく、太宰治のいくつかの作品がエピソード的に入っていますので、そこが、太宰そのものでは?と思わせるのですが、それだけじゃない、主人公とその夫を取り巻く人たちの人柄、風情が、さらに、この映画のそこはかとない、生を問うことのむなしさ、愛を語ることのやるせなさを感じさせてくれたような気がします。
そして、妻夫木君の演じる岡田という青年も、なんというか甘酸っぱい中に、とてもセンチメンタルな気持ちにさせてくれます。
彼の、「キリギリス」だったかな、の中の台詞を話すシーン、なんかいいです。
それ以外にも、伊武雅刀、室井滋の居酒屋の夫婦、佐知が昔好きだった、弁護士の辻もいいですね。 堤真一さんて、この手の熱いんだけど、ちょっと影ありめの雰囲気、があいそうです。
いくつか、印象的なシーンがありますね。
自分の場合は、最後の方で、大谷の弁護をお願いした、堤真一扮する辻の元へ行くときに、大枚で、いわゆる、GI向けのねぃさんから口紅を買うわけで、あのシーンの松たか子が”したかかな”女性になっていく姿、終わって、口紅を花壇において行ってしまうシーンは、それこそ、辻との対峙の時を含め、女の怖さを見たような気がします。
それから、どこかで記事を見ましたが、睡眠薬自殺に失敗したヒロスエ扮する秋子が、私は大谷から選ばれたのよ、的な顔で佐知を見るシーンの目つき、それから、終電の中央線で、佐知と岡田を伺う、大谷。
ある意味、男のほうがロマンチストかな、そういう風に描いてますね。
さて、演技的には、大谷を演じる、浅野忠信さんの評価が凄く高いのですが、実際、見たときに感じたのは、弱さがちょっと少ないような気がしました。かっこよく感じ、気障でまた、自暴自棄になり、浮気性で、酒に流れ、溺れるというどうしようもない性格ではありますが、自分には、あの1シーンの弱さ、が伝わってこなかった。線の細い、繊細な感じもするのだけど、彼のしゅっとした芯のある部分が見えてしまったかな。
特に、岡田という青年に佐知が心を寄せたと感じてしまったときの動揺とかは、もう少し、目線、うつろになるような気がするんですよ。
で、かえって、松たか子さんが見事になってしまいました。 そのサチという女性を選んでます。彼女にも大谷を含め、3名の男性がでてきますが、その中で、自分を見失わず、また生きることにしたたかになっていく女性の強さを感じてしまったような気がします。
監督の根岸さんの、「ひとひらの雪」「雪に願うこと」 のときのようなとても人間の強弱をみせてくれる演出、田中陽造さんのとても丁寧で、でも余分のない脚本、脇もいいかんじでしたので、浅野さんをちょっと残念に感じた分、満点、いや90点にはできなかったかな。
最後のシーンですが、中野駅(ということになってるけど、高円寺じゃないの?)のガード下で、「生きてるだけで良いのよ」と言いながら、大谷の手をとる佐知の言葉、その表情に、なんというか、「やっぱりこの人は・・・」という感じを漂わせ、逆に、憔悴した大谷のその表情から、死というより、生に追われた男の疲れを感じてしまい、そのまま、画面がモノクロームになるにつれ、その疲れが、くっきりとしてくるような気がしました。
で、当時ですが。お酒、たぶん、ほとんどがどぶろくで、良くて2級酒だったのではないだろうか。 昭和21年にビールはあったのか? それも謎ですが、当時はラガーもかなり違う味だったんでしょうね。
そして、たぶん、高かったと思うんですね。
最後に、こんな大谷ですが、ちょっとあこがれ(汗)を持つことあるんですよ。 自堕落にあこがれたりして。 そのどうしようもない姿を、かわいいと思ってくれる人を待って(え)。
そんなことないんですけどね。
虚勢を張るのも男だけど、なんというか、糸が切れたように崩れていくのも男だったりします。
嫌いな(?)CXさんだけど、役者的には、CX色が少なく、たぶん、「(賞を)取りにいった映画」なんだろうけど、うん、良い映画だと思います。
【製作メモ】 from
All Cinema ONLINE
メディア 映画
上映時間 114分
製 作 国 2009年 日本(フジテレビジョン/新潮社/日本映画衛星放送 ほか)
公開情報 劇場公開(東宝)
初公開年月 2009/10/10
ジャンル ドラマ
映 倫 PG-12
《公開時コピー》
太宰治 生誕100年
ある夫婦をめぐる「愛」の物語
監 督 : 根岸吉太郎
製 作 : 亀山千広
山田美千代
田島一昌
杉田成道
プロデューサー:前田久閑
木幡久美
菊地美世志
エグゼクティブプロデューサー:
石原隆
直井里美
酒井彰
アソシエイトプロデューサー:
稲葉直人
原 作 : 太宰治
脚 本 : 田中陽造
撮 影 : 柴主高秀
美 術 : 矢内京子
美術監督 : 種田陽平
衣 裳 : 古藤博
編 集 : 川島章正
音 楽 : 吉松隆
音響効果 : 齋藤昌利
スクリプター: 岩倉みほ子
ヘアメイク : 倉田明美
衣裳デザイン: 黒澤和子
照 明 : 長田達也
装 飾 : 鈴村高正
録 音 : 柿澤潔
助 監 督 : 高橋正弥
出 演 : 松たか子 佐知
浅野忠信 大谷
室井滋 巳代
伊武雅刀 吉蔵
広末涼子 秋子
妻夫木聡 岡田
堤真一 辻
光石研
山本未來
鈴木卓爾
小林麻子
信太昌之
新井浩文
画像は、あとで upします。