ミニシアター系ではなかなかのヒット作ではなかったかと思いましたが、1000円の日に見てきました。
「ゆれる」で一躍評価を得た、西川美和。
【ストーリー】
山間の小さな村のただ一人の医師、伊野が失踪した。村人たちに全幅の信頼を寄せられていた伊野だったが、彼の背景を知るものは誰一人としていなかった。やがて刑事が二人やってきて彼の身辺を洗い始める――。失踪の2か月前、東京の医大を出たばかりの研修医・相馬が村にやってくる。看護師の朱美と3人での診察の日々。そんなある日、一人暮らしの未亡人、かづ子が倒れたとの一報が入る……。
「
goo映画」より引用
参考サイト
excite映画 (
該当ページ)
映画生活(
該当ページ)
trackback from
相変わらず、ネタバレ気にせず記事をあげちゃいます。なので、下まで、気になるかたは、ずーっと見ないでください。
時系列に関係なく、方々trackback することをご容赦ください。
「ディア・ドクター」の映画詳細、映画館情報はこちら >>
【解説】
『蛇イチゴ』『ゆれる』の西川美和監督が、笑福亭鶴瓶を主演に迎え、僻地医療や高齢化など現代の世相に切り込んだ人間ドラマの秀作だ。本作で映画初主演を務めた「日本で一番顔を知られた男」笑福亭鶴瓶が演じるのは、無医村に赴任した医師。村人から全幅の信頼を集めながらも、謎に満ちた彼の素性――。その医師の失踪をきっかけに浮かび上がる彼の行動と人物像を軸にした心理劇が展開される。『アヒルと鴨のコインロッカー』の瑛太をはじめ、八千草薫、余貴美子など、若手やベテランともに実力のあるキャストが集結した。前2作同様、“善”と“悪”の両極では決して語れない人間の複雑な内面を描くことに定評のある西川監督の脚本が秀逸だ。。
「
goo映画(
タイトルトップ)」より引用。
【感想】(ここでは、ネタバレはぼかします)
2時間ちょっとの間、見ている側では、ある人は村の人になり、ある人は、警察の人に、ある人は、伊野その人になって見ることができる映画だったのではないでしょうか。
その見方によっては、悪く思う人もいるでしょうね。
映画としては、最初に伊野が失踪してしまうわけで、そこから、若い研修医が来村してから伊野が失踪するまでの経過と失踪後、警察が、失踪捜索をしていく経過を交互に見せてくれるのですが、事実は言葉としては、ほとんど語られない。
なんとなくなんです。
なんとなく、やりとりや行動から類推できるそれこそ、どなたかが書いてらっしゃったグレーゾーンな描写が、なんとはなく”ゆれながら”観客それぞれの感性につたわっていくような気がしました。
この映画で伝えたかったこと、西川監督は、どう思ったかはみなさんそれぞれの自分のこれまでのいまの状況に置き換えてくださいと言ってるかも知れないのですが、伊野と村の人たちのふれあいをみていると、昔の「赤ひげ先生」にあったものって、これなんだろうな、って思いましたね。
もう一つ、やっぱりこの映画のポイントは、主役の鶴瓶さんだと思います。
これ、ずるいです。この伊野という男、彼がかつて大阪ローカルでやっていた、そして最近は某公共放送の番組でやってるキャラクターと見事にかぶります。
かなり彼の言葉に置き換えられたんだろう台詞がかえって伊野の立場と心情を理解させるにはよかったような気がします。
ということで、いまのところは、年末の映画祭の作品賞候補のような気がするいい作品です。
ロングランも予想されますが、映画館が小さいスペースに流れていきそうなので、土曜日のあの日に映画を見るつもりだったらぜひおすすめしたいです。
【私の採点】(採点のあとは、思いっきりネタバレしますので(ぇ))
★★★★☆
(満点10点 ★:2点。☆:1点)
10点もあげるべきか? それとも・・・。と思いましたが、じゃあ、7点でもよかったかと思うところもあって・・・。
この演出が吉と出るか凶と出るか、その受け取り方もあるでしょうね。
とにかく、視点がとてもおもしろいと思いました。
ここからは何を書いてもネタバレしないと書ける気がしないので、気にせず行きますが、予告編もあったから、冒頭に伊野を失踪させ、その後すぐに彼は無免許だったとバラしたのは、正解だったかと思います。
この映画では、無免許とか免許とかっていうのは現実とは違い、あまり大きな意義を持ってないのかなと思いました。なので、刑事がしきりに、無免許ということから、騙し、騙されたことを懸命に聞き取ろうと村の人を始め関係者に聴いて回るのだけど、その言葉が腹立たしく感じたり、空しいことなんじゃないかと思ってしまいました。 では、村の人は、失踪をどう思っていたんだろうか。おそらく、その理由もわかっていて、彼の行為がどうだとかではなく、失踪してしまったことをひょっとしたら悔いているのかもしれないというのをとても感じました。
この感想も、インタビューだけでなく、村で伊野が対応したことに関しての村の人の対応で、村の人たちも伊野が追い詰められた部分を感じていて、「助け船」を出すと思えるシーンもあったりするので、そう判断したんですけど、
これも違うかも知れない。
あと、伊野が、相馬に対して、話した言葉、かなり効きますね。「おれ、ニセモンや」から始まる言葉。どういう形でこの仕事をやったにしても、最初は、軽い気持ちだったかも知れない、でも、だんだんとその責任の重たさを感じ、それで逃げ出せなくなったってくだり。こんな話、仕事の中でも大なり小なり、結構ありますね。 そのときは、「情」で動くのか、それとも「責任感」で動くのか。 そんな揺れ動きも痛いくらいに突き当たってきます。
それと、鳥飼かづ子さんのことですが、無免許、免許にかかわらず、本人に伝えるのって、勇気が要りますね。結局、伊野は、無免許だったけどリスク回避はまじめに考えていた、だから、胃カメラも飲ませたし、子供が医者だとわかると、治療法も教科書どうりにやろうとしたんでしょう。ここまでは、「責」です。そこまでやっても、いざ、彼女の娘さんがあと1年帰省しないとわかると、病気の進行を知ってしまった以上、どうしようもなくなり、「情」で動いてしまったんでしょう。
この方法しか、彼は思いつかなかった。
あとは、「緊急性気胸」の青年のくだり。怖がる伊野に、空気穴を作れと指示する看護師の大村。
もう、この辺で、伊野とこの村の人たちとの言葉では言えない関係がわかったような気持ちになりました。
そのあと、彼がここに来る前に何をやっていたかがわかるのですが、なるほど、確かにその仕事をしているとうわべだけだけれど、医療行為はわかるような気がします。
結局のところ、人は医師になにを求めているか。 「安心」なんだろうと思います。その「安心」の定義は、人それぞれであり、それをなんとかしようと奮闘した伊野を相馬も責めきれないんだと思いますが、彼自身は、揺れ動いているのが、刑事とのやりとりでは見えますね。
西川監督は、そのあたりの機微を「なんとなく」伝え、そして、「なんとなく」を観客がどう咀嚼するかを預けた感じで、それでも、「人の死」「死を迎えること」を「無医村の問題」とあわせて描いたように思いました。
で、「無免許」については、免許の前に日本人の大部分が医者に求めていることを伝えることで、答えをだしてほしいんだろうと。
伊野と相馬が「ニセモン」について口論するシーン。確かに免許だけの人も居ると思います。自分もとある時に医者を代えたことがあったのですが、その理由は、ここでも書けない、信じられない台詞を聞いたから。 それで、薬漬けになる人もいるでしょうね。
さて、感想でもふれましたが、演技陣では、最近はヒアルロン酸のクスリのCMでしか顔を拝見しなくなった八千草薫さん、最近、出るたびに名演を楽しませてくれる、余貴美子さんは、秀逸ですね。八千草さんは、あの気品ある佇まいだけで、もう、安心してしまいますし、余貴美子さんは、さすが、っていうところですね。 最後のシーンで、彼女がこの村に戻った理由もなんとなくわかるんですが、彼女も伊野に心を預けていたんでしょうね。よくわかります。
それから、井川遙さん。少ないシーンでしたが、抑えめで演技できていたのには驚きです。しかも、いい顔になってきました。 ちょうど撮影時は妊娠していたのでは?と思うのですが、それもあってシーン少なかったのかな。 昔、ファンだったのを思い出しました(ぇ)。
瑛太さんは、「ゆれる」のオダジョーさんと比べてしまうのでちょっとアレでしたけど、いいと思います。 伊野が、相馬に詰め寄られ、つい「ニセモンや」と言った後、もう少しで彼は、事実を吐いていたでしょうね。 でもはかなかったところに相馬の弱さがあるんだけど、その辺、よかったなぁ。そして、「ゆれる」でも名演された、香川照之さんは、出過ぎず、伊野との距離感を見せてくれました。 この人も佐藤浩市さんと同様、映画出過ぎでないか???(笑)
で、問題の?主演ですが、落語家鶴瓶でなく俳優鶴瓶だったという見方も多いですね。でも、そうなんだろうか。 実際、子供の頃?からこの落語家さんというかタレントさんを見てきましたが、全部は見せないにしろ、生き様を見せられてきたタレントさんであり、その部分が多かれ少なかれ、伊野とのマッチングを見せているように思いました。
なので、このキャスティングで、半分くらい、この映画は成功だったんでしょうね。
あとは、八千草薫さんとの掛け合い。ご飯を食べて、テレビを一緒に見るシーンは、圧巻です。
そして、ラストにこめられたもの。 それが、伊野があの村に居続けた理由であり、伊野の本当の姿なのかも知れません。 実は、安心しましたし、そのときの彼女の顔こそが、彼女は伊野を、そして自分を知っており、それで行動したことの事実なんでしょうね。
【製作メモ】 from
All Cinema ONLINE
英 題 Dear Docter
メディア 映画
上映時間 127分
製 作 国 2009年 日本(エンジンネットワーク/電通/朝日新聞社ほか)
公開情報 劇場公開(エンジンフィルム=アスミック・エース)
初公開年月 2009/06/27
ジャンル ドラマ
《公開時コピー》
その嘘は、罪ですか。
監 督 : 西川美和
プロデューサー:加藤悦弘
企 画 : 安田匡裕
原 作 : 西川美和
脚 本 : 西川美和
撮 影 : 柳島克己
美 術 : 三ツ松けいこ
編 集 : 宮島竜治
音 楽 : モアリズム
音楽プロデューサー:
佐々木次彦
衣裳デザイン: 黒澤和子
照 明 : 尾下栄治
録 音 : 白取貢
加藤大和
出 演 : 笑福亭鶴瓶 伊野治
瑛太 相馬啓介
余貴美子 大竹朱美
井川遥 鳥飼りつ子
松重豊
岩松了
笹野高史
中村勘三郎
香川照之 斎門正芳
八千草薫 鳥飼かづ子
画像は、あとで upします。