この夏、予告編だけで、見たいと思った映画です。
『セントアンナの奇跡』
スパイク・リーのヒューマンニズム作品です。
【ストーリー】
ニューヨークの郵便局で働く定年間近の局員が、ある日窓口で切手を買いに来た男性客をいきなり銃殺した。男の名はヘクター。前科や借金などもなく、精神状態も良好の実直な男だった。家宅捜査の結果、彼の部屋から長きに渡って行方不明となっていたイタリアの貴重な彫像が発見された。一向に犯行動機を口にしないヘクターだが、やがて重い口を開く。謎を解く鍵は第2次世界大戦真っ只中の1944年、イタリアのトスカーナにあった。
「
goo映画」より引用。
参考サイト
excite映画 (
該当ページ)
映画生活(
該当ページ)
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相変わらず、ネタバレ気にせず記事をあげちゃいます。
なので、下まで、気になるかたは、ずーっと見ないでください。
時系列に関係なく、方々trackback することをご容赦ください。
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【解説】
『ドゥ・ザ・ライト・シング』『マルコムX』などでアメリカ黒人社会の光と影を描き続けているスパイク・リー監督が新境地を開いた。原作・脚本は、叔父がかつて黒人のみで編成された部隊“バッファロー・ソルジャー”の一員であったジェームス・マクブライド。1944年8月12日、イタリアのトスカーナでナチスが罪のない大勢のイタリア市民を殺害した“セントアンナの大虐殺”を下敷きに作り上げた物語である。かつて激しい攻防が行われた戦場や過酷な虐殺現場となったセントアンナ教会で撮影を行い、文化の違いやイタリアの方言を正確に描くためにこだわりぬかれた俳優たちが生み出す“本物”のエネルギーをスクリーンで体験してもらいたい。
「
goo映画(
タイトルトップ)」より引用。
【感想】(ここでは、ネタバレはぼかします)
長丁場の映画でした。
実際、やや退屈になったのは事実(ぇ)で、衝撃のセントアンナの大虐殺のシーンも、残酷且つきれいに描きすぎでないか?とも思いました。ですが、クライマックスシーン、そして、エンディングを考えると、これは、「丁寧」にエピソードを紹介したスパイク・リー監督の気持ちどおり、ラストシーンできっちり泣きそうになりました。
冒頭の戦闘シーンも、他の戦争映画、たとえば、みなさんが話題にする、「プライベート・ライアン」よりも自然に怖い、緊張したシーンに仕上がってます。また、それだから、バッファロー・ソルジャーを白人将校たちがどうあつかったのか、もうむなしく感じます。
でも、彼らは、母国アメリカを愛していたこともわかるシーンがあり、それが余計にこの時代の黒人に対するあれこれを考えさせられます。
そして、この映画が不思議なのは、善悪をはっきりさせてないような表現。裏切り、博愛、といった、意外なシチュエーションが「奇跡」を生んでいる点でしょうか。それを、奇跡というのかは、わからないのですが、でも、不思議と「女神の頭」を持っていると命が救われていくのだけど、それが、素直に受け止めれる(と限らないこともあるかな)。
母国愛を持っていても、やっぱり白人は憎いし、自由は欲しいけど、やっぱり命は大事、そんな相反する中で、ドイツ人将校が取った行動も、理解できるけど複雑な気持ちにさせます。
ラストについては、賛否あるでしょうけど、ずぶずぶになりながらの感動のシーン、くさいかもしれないのだけど、まあ、あれだけの中をだから、よけいにとなります。
で、ちょっとヴァレンティナ・チェルヴィのサーヴィスシーンは、うれしい(ぇ)けど多くないか? と思ったり。
【私の採点】(採点のあとは、思いっきりネタバレしますので(ぇ))
★★★★
(満点10点 ★:2点。☆:1点)
ほめすぎ? いや、やや長尺の映画ではあり、前半、特に、ウィテカーに似てるとネットでも評判?のオマー・ベンソン・ミラー扮する、サム・トレインと少年の交流のシーンなんて、もっとはしょれるのでは?と思ったりもしましたし、こいつら、イッテル(ぇ)とも思ったのですが、このシーンが後半のちょっと悲しい出来事につながるかなぁとも思いまして、まあ、これだけ、スパイク・リーは言いたかったんだろうということは伝わったのでは?と思いました。
最後のシーンですが、実は、執事がヘクターに話す言葉のほうが感動しました。
これが、スパイク・リーの言葉なのではないだろうか。ちょっと台詞、マジで探します。
「奇跡」は、予想もしないことではないし、そもそも相手や人に対して、思っていたことを別のことが、しかも、考えられないことが起きたときに使われるのかも知れないが、その「奇跡(miracle)」は、あくまでも自分本位であり、相手が普通の人だったり、普通のことだったら、奇跡ではなく、当然なことになるんだろう。と。
登場人物の中で、ヘクターは、それこそ、普通の人だったのかもしれない。国家を語ったスタンプスでも、世間を冷めながら自分のことは大事にしていたビショップでも、神を、奇跡をあまりにも信じすぎ、また、優しさを自分中心で考えたように見えたサムでもない。
ごく”普通”に生まれ、”普通”に戦争に巻き込まれ、”普通”に一兵卒として戦場で、任務を全うしようとしたヘクター。ただし、トスカーナをセントアンナにしてしまった時に、彼は、はじめて”特別”な感情を持ったのかもしれない。その力が、最後生きながらえることができ、少年に、「生きる」ことを伝え、逃がしたのではないかと思いました。
「生きる」こと。大事なことだけれど、純粋に「生きる」のは難しいです。
それは、隣が倒れても、それなりに生きなければいけないし、まずは、自分というのは、その瞬間では当然かもしれない。そこで、どう思うのも人間ですが、まずは、起こしてはならないのが戦争、ということは紛れもない事実だと重ねて思いました。
スパイク・リー監督は、人間がどうしても持ってしまう、偏見と先入観、そして、思いこみのようなものと、そこから生まれる、この奇跡というか偶然の産物を重ね合わせ、その考え方によって、不幸も幸福も産むことを見せてくれたんじゃないだろうかと思いました。
それにしても、R-15指定ですが、この意味は、確かに血しぶきがバシバシ、まあ、ここまでむごかったのかという、一般人を巻き込んだ銃撃戦の怖さをみせてくれ、また、残念ながら、黒人差別は、戦争の前線まであったことを知らせてくれる作品です。
私の子供の頃にこの映画があったら、親子で見てただろうと思うし、事実を受け止め、話合ってみるのもいいかとも思える作品です。
救いは、ちゃんとあります。自分は生きるんだと言うこと、生きていれば、他人を犠牲にする人生を贈らなければ、結果は自分にもたらされるんだと。
また、各人が設定通りの国の言葉をしゃべっているのもなんとなく、リアリティを高めてしまう。
当然、ドイツ軍は、ドイツ語、イタリア人は、イタリア語(フィレンツェの方言入ってたらしい)。
そこまでのこだわりもすごいです。
また、この映画もイタリアでほとんどのロケをやったそうですが、スパイク・リー監督が乗り込んで、地元の人もいやがった、セントアンナでの虐殺シーンなどは、ショッキングなんだけど、余計に伝わってくるものがありました。
どこかで、見かけた中に、ヘクターは刑務所で記者に事実をしゃべったかのような表記も見かけましたが、彼は、なにも言ってないのじゃないでしょうか。しゃべった言葉は、「眠る男」の正体を見たと言うこと。そして、彼は、また、少年もこの事実は、おそらく、墓場まで持っていったのではないだろうか。記者にしゃべってもその時点では、興味本位に書かれることはヘクターは想像していたように思え。
予告編では、なんというか、少年と黒人兵士の心の交流だと思ってたら大間違い、とても重い題材を見事な味付けで観た映画でした。
感想でも記載しましたが、ヴァレンティナ・チェルヴィ、あの年で・・・(ぇ)。
追記:
ヘクターが冒頭シーンで再会してしまったのは、どうやら、あの、パルチザンの「裏切り者」だったらしいですね。 うん、自分でも再会したくないです。
【製作メモ】 from
All Cinema ONLINE
原 題 MIRACLE AT ST. ANNA
メディア 映画
上映時間 163分
製 作 国 2008年 アメリカ/イタリア(TOUCHSTONE/TOSCA)
公開情報 劇場公開(ショーゲート)
初公開年月 2009/07/25
ジャンル ドラマ/戦争/ミステリー
映 倫 R-15
《公開時コピー》
女神は<奇跡>を、人に託した
監 督 : スパイク・リー
製 作 : スパイク・リー
ロベルト・チクット
ルイジ・ムジーニ
製作総指揮 : マルコ・ヴァレリオ・プジーニ
ジョン・キリク
原 作 : ジェームズ・マクブライド
脚 本 : ジェームズ・マクブライド
撮 影 : マシュー・リバティーク
プロダクションデザイン:
トニーノ・ゼッラ
衣装デザイン: カルロ・ポッジョーリ
編 集 : バリー・アレクサンダー・ブラウン
音 楽 : テレンス・ブランチャード
出 演 : デレク・ルーク オブリー・スタンプス二等軍曹
マイケル・イーリー ビショップ・カミングス三等軍曹
ラズ・アロンソ ヘクター・ネグロン伍長
オマー・ベンソン・ミラー サム・トレイン上等兵
ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ
ペッピ・“ザ・グレート・バタフライ”・グロッタ
ヴァレンティナ・チェルヴィ レナータ
マッテオ・スキアボルディ アンジェロ・トランチェッリ(少年)
セルジョ・アルベッリ ロドルフォ
オメロ・アントヌッティ ルドヴィコ
ルイジ・ロ・カーショ アンジェロ・トランチェッリ
ジョン・タートゥーロ アントニオ・“トニー”・リッチ刑事
ジョセフ・ゴードン=レヴィット ティム・ボイル
ジョン・レグイザモ エンリコ
ケリー・ワシントン
D・B・スウィーニー
ロバート・ジョン・バーク
オマリ・ハードウィック
アレクサンドラ・マリア・ララ
スティーヴン・モンロー・テイラー
ウォルトン・ゴギンズ
トリー・キトルズ
※写真関係はあとで追記します。
※追記しました。